◆「下請法」とは?
下請法は、正式名称を「下請代金支払遅延等防止法」といい、下請取引の公正化・下請事業者の利益保護を目的としています(下請法第1条)
下請法の対象となる取引は、事業者の資本金規模と取引の内容で定義されています。大まかにいうと、事業を発注する「親事業者」とそれを引き受ける「下請事業者」があり、親事業者の一方的な都合により、発注後に下請代金が減額されたり、支払いが遅延したり、納品物の受領拒否がないようにしたりするために制定された法律です。
【親会社の義務】
・書面の交付義務:発注の際、直ちに同法第3条に規定する書面を交付すること
・支払期日を定める義務:下請代金の支払期日を給付の受領後60日以内で定めること
・書面の作成・保存義務:下請取引の内容を記載した書類を作成し、2年間保存すること
・遅延利息の支払い義務:支払が遅延した場合は、遅延利息を支払うこと
【主な禁止事項】
・受取拒否:下請事業者に責任がないのに注文した物品等の受領を拒むこと
・下請代金の支払遅延:下請代金を給付の受領後60日以内で定めなければならない支払期日までに支払わないこと
・下請代金の減額:あらかじめ定めた下請代金を減額すること
・不当返品:下請事業者に責任がないのに受け取った物を返品すること
・買いたたき:類似品等の価格又は市価に比べて著しく低い下請代金を不当に定めること
・購入・利用強制:親事業者が指定する物・役務を強制的に購入・利用させること
◆下請取引の現況
公正取引委員会の運用状況(平成28年度上半期(4~9月))によると、下請法に違反した親事業者を指導した件数は、3,796件と昨年度の上半期に比べ433件増え、過去最多となっています。また、「指導」より重く、事業者名を公表する「勧告」は3件で、昨年度上半期を1件上回りました。
◆下請法違反対策への取組み
経済産業省と中小企業庁は、昨年12月より下請法の運用を厳しくしています。また、今年1月からは、取引調査員(下請Gメン)を配置し、年間2,000件以上の下請中小企業を訪問して違反がなかったかを調べる取組みを始めました。企業(親事業者)には、下請事業者が泣き寝入りすることのないような取引が求められます。
◆下請法以外の法律関係について
親事業者と下請事業者が取引する場合、まずはこの下請法の規定が適用され、下請法が適用されない行為については独占禁止法が適用されることになります。
よく、小売業などでは、改装等で陳列応援なんてやりますけど、納品業者に別の会社の商品を陳列させたり、接客させたりする行為、コンビニ等のフランチャイズ店に見切商品販売を禁止する等の強制は、この独占禁止法の「優越的地位の濫用」として取締りの対象になったりすることがありますので、ご注意を。
また、この下請法、独占禁止法に関しては、個人が業務委託契約で仕事を請負う働き方が今後、増えていくと思われますし、逆に、自らが事業者になるということは自ら行う取引にも注意していかなければならないということを肝に銘じてほしいと思います。(インターネット事業であれば特定商取引法、景品表示法等)