6月は、年度更新、算定の時期です。

毎年この時期、労基署から「労働保険料・一般拠出金申告書」と書かれた封筒が送られてきます。

日本年金機構からも同様に「健康保険・厚生年金保険被保険者報酬月額算定基礎届」が届きます。

これは、何をするのかといいますと、労働保険に関しては、1年前に見込みの給与額で支払った保険料と、実際の給与額で計算した保険料を突き合わせて精算する作業になります。精算とはいっても、月々で多く払っていたら所得税のように還付されるというものではなく、次の年度の保険料負担を減らすという処理になります。(逆に、不足していた場合は負担が増えます。)

健康保険・厚生年金保険の保険料は、労働保険とは異なり、「毎月の給与額×保険料率」で計算されるわけではなく、毎年4月~6月に支払われる給与を平均した額を、その人の保険料算定の単価とみなして、大幅に変わらなければ1年間はそのままの金額で計算するという仕組みになります。その金額を算定するための届出が「算定基礎届」というものになります。

給与計算をしておりますと、健康保険料・厚生年金保険料の金額が毎月異なっているような給与の支払いをしている企業様がいらっしゃいますが、実は1年間(昇給、昇格等がない限り)固定の金額になります。給与から少なく控除してるけれど届け出ている単価が高いという場合は、問題にならないと思いますが、給与から多く控除しているけど届け出ている単価が低いとなると、手取り額も低くなってしまいますし、将来受け取れる年金も低くなってしまいますので注意が必要です。

特に、自分で計算式を組んで、給与計算をなさっている方などは、陥り易いミスですので、わからないことは知っている人に聞くということを心掛けるようにしましょう。


なくならない長時間労働と労働監督

今週、新聞やニュースで、「労働監督」を民間委託するという内容が出回っておりました。具体的には社労士が、労働基準監督官の代わりに企業を回って、監督業務を行うというものです。

厚生労働省は民間委託は無理と言っていたみたいですが、私も同意見で、社労士が労働監督を行ったところで、その場で臨検監督や行政指導を行ったり、特別司法警察職員として自身の判断で書類送検にしたりということはできないですので、実効性には欠けると思われます。

また、社労士はどちらかというと、違法な状態を「違法だから今すぐ直しなさい」ということは言えなくて、事業主ができる部分できない部分を考えて「ここはこういうことなので、一つずつ改善していきましょう。」という提案をするのが仕事ですので、なかなか難しい部分があります。

世の中的には、長時間労働撲滅!という動きになってきてはいるものの、労働時間規制のみで、業務の中身については規制はありません。だから、退社時間は早くなるけど、業務量は変わらず、結果、残業をする、仕事を持ち帰るということになってしまいます。

長時間労働をなくすためには、業務の中身からのアプローチが重要でありますが、多くの会社はここをせずに、残業規制だけします。なぜなら、簡単だから。

これでは長時間労働は、いつまで経ってもなくならないでしょう。


中小企業における「働き方改革」の導入状況は?

◆中小企業の人手不足は今後も続く?

来年度の新卒求人倍率は、全体で1.78倍、従業員5,000人以上の企業での0.39倍に対して、300人未満企業では6.45倍になると推計されており(リクルートホールディングスの調査)、来年度も売り手市場となり、中小企業での人材確保は厳しい状況が予測されます。

こうした中、商工中金から『中小企業の「働き方改革」に関する調査』の結果が公表されました。この調査は、人手不足への対応にもなると注目され、「働き方改革」で議論されっている各取り組み・制度について、中小企業の導入・実施の状況等を調査したものです(10,022社が対象、有効回答数4,828社)。

調査結果からは、全体的な状況として雇用が不足(「大幅に不足」と「やや不足」の計)しているとする企業が58.7%を占め、「営業」「販売・サービス」「現業・清算」の職種で不足感が強く、特に「正社員」が不足していることがわかります。

◆「働き方改革」について

働き方改革で注目されている12の取組について、「シニア層の活用」「子育て世代の支援」は過半数が既に導入・実施していますが、「在宅勤務」「サテライトオフィス」「副業・兼業の容認」の導入・実施は1割未満でした。

<注目される12の取組み>

①長時間労働の管理・抑制に向けた取組み

②OJT・OFF-JTなど、社員教育の制度

③資格取得・通信教育への補助金など、自己啓発の支援

④在宅勤務制度

⑤勤務先や移動中におけるパソコン等を活用した勤務制度(モバイルワーク)

⑥サテライトオフィス勤務制度

⑦副業・兼業の容認

⑧定年延長など、シニア層活用の制度

⑨育児休業や短時間勤務など、子育て世代支援の制度

⑩妊娠・出産期の女性支援の制度

⑪介護休業など、介護離職防止の制度

⑫外国人労働者活用の制度

 

これからの時代を乗り切るためには、まず、人手不足、「正社員が足りない」のであれば、社内の人材である程度、社内ルールや業務の要領をわかっている非正規労働者を「正社員に登用していく」のが一番の近道であると思います。知識や技術が足りないのであれば、社内あるいは社外での教育訓練を行いキャリアアップを図っていくことが重要です。(キャリアアップ助成金等の活用もできます。)

新卒の正社員でも十分な教育訓練を受けられずに、業務に就かされることが少なくなく、早期の離職につながってしまうこともあります。

ただ、教育訓練は、OJT(職場内教育訓練)だと実務能力は得られますが、人手不足で教え手がいないことが考えられます。また、OFF-JT(職場外で行う教育訓練)だと体系的な学習ができ知識等を業務に役立てることができますが、費用が高いなどの問題があります。(人材開発支援助成金、職場定着支援助成金等の活用)

そういった、教育も含めて、従業員のキャリア形成を通じて、企業の成長戦略を立てていく必要があります。

人材ではなく、人財としての活用の仕方を考えてみてはいかがでしょうか?


「仮眠も労働時間」イオン関連会社に残業支払い命令

イオンの関連会社で警備業の「イオンディライトセキュリティ」(大阪市)の男性社員(52)が宿直の仮眠は労働時間にあたるなどとして、未払い残業代などの支払いを求めた訴訟の判決が17日、千葉地裁であった。

小浜浩庸裁判長は「労働からの解放が保証されているとは言えない」として、原告の請求をほぼ認め、未払い残業代と付加金の計約180万円を支払うよう同社に命じた。

判決によると、男性は2011年に入社し、都内や千葉市のスーパーで警備の仕事をしてきた。千葉市の店で働いていた13年1月~8月には24時間勤務で、30分の休憩時間と4時間半の仮眠時間があった。

原告側は「仮眠時間でも制服を脱がず、異常があった際はすぐ対応できる状態を保ったままの仮眠で、業務から解放されなかった」と主張。小浜裁判長は「仮眠時間や休憩時間も労働から解放されているとは言えない」と指摘した。

男性は残業代支払いを求めた後に出された別の部署への異動命令についても、不当な配置転換だなどとして慰謝料500万円を求めていたが、千葉地裁は「異動は業務上必要があったと認められる」として、請求を棄却した。

閉廷後、会見した男性は「同じような労働環境で働いている同僚がいる。今回の判決が、警備業界の就労環境の向上につながれば」と話した。同社は「判決の内容を精査し、適切な対応をしたい」とコメントした。

出典:朝日新聞デジタル

 

朝のニュースを見て、これはいい資料だと思い、載せさせていただきました。休憩時間や仮眠時間でも、問題があったらすぐに対応しなければならない「待機(手待)時間」であるという考え方が改めて示されたということです。

それよりも、気になるのが「千葉市の店で働いていた13年1月~8月には24時間勤務」という文言で、これについて、残業手当や深夜勤務手当、休日手当等は、適切に支払われているのかという疑問は残ります。具体的な勤務実績等を見ていかないと詳しいことはわかりませんが、もし、警備業界の顧問先ができましたら、そこらへんを注視してみていきたいと思います。


東本願寺、残業代不払い 「時間外払わない」覚書/京都

真宗大谷派の東本願寺(京都市下京区)が、研修施設で働く男性僧侶2人に、残業代を支給していなかったことが先月26日わかった。「時間外割増賃金は支給しない」との違法な文言を含む覚書を、労働者代表と交わしていたという。2人が外部の労働組合に加入し労使交渉を行い、同派は2013年11月~今年3月の不払い分として、計約660万円を支払った。

労働組合「きょうとユニオン」によると、2人は全国から訪れる門徒の世話をする「補導」を務めていた。業務が多い日には午前8時半から泊りがけで、翌日午後まで連続32時間以上働くこともあった。覚書が締結されたのは1973年11月で、40年以上残業代不払いの状態が続いていた。

東本願寺によると、昨年1月から「内払い金」という名目で、固定残業代を支払っているという。真宗大谷派の下野真人事総務部長は「信仰と業務の線引きは難しいが、今後は勤務時間の把握と管理を徹底する」と話した。

(時事通信)

 

そもそも、僧侶は労働者なのでしょうか?

「使用者に指揮監督されているかどうかを重要な判断要素としたうえで、他の総合的な考慮を含めて判断される。」としておりますので、全てが労働者とはならないのですが、少なくともこのケースでは、「宗教法人の指揮監督下で、業務(門徒の世話をする「補導」)として働いており、かつ、その業務に対し給与を支払われていた。」ので、労働者と判断されたということになります。

「内払い金」についても、固定残業代ということですが、たとえば、「月20時間残業分を固定で支払い、20時間を超えた時間については別途計算して支給する」としているのであれば、固定残業代でもいいのですが、びた一文払わないとしているところが問題なのかなと思われます。

小さいお寺で人を雇うということは、なかなかないでしょうから、レアケースだとは思いますが、労務管理の重要性はこんなところにも広がりを見せております。


5月30日施行「改正個人情報保護法」への対応状況について

◆3割強の事業者では対応が間に合わない?

これまで5000人以下の個人情報を保有する事業者においては適用除外として扱われておりましたが、5月30日から全面施行される改正個人情報保護法によって、すべての事業者に適用されることになり、企業も対応に追われているところです。

一般財団法人日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)が日本商工会議所との共催で行った「中小企業向け改正個人情報保護法実務対応セミナー」(東京:平成29年1月17日・1月27日の2回開催、大阪:平成28年12月9日の1回開催)において、参加者に対して実施した改正個人情報保護法への対応状況についてのアンケート結果によると(全セミナー参加者642名中、回答者544名)、改正個人情報保護法への対応について、現段階で「対応済みである」との事業者は全体の7.9%と1割に満たず、「平成29年の春頃までには対応する予定である(できると考えている)」と回答した割合は59.6%、「いつまでに対応が完了できるかわからない」との割合は28.7%となったそうです。

昨年末から今年頭にかけての回答状況ですが、対応の進んでない企業が少なくない状況が読み取れます。

◆改正個人情報保護法のポイント

1.個人データの第三提供の制限ルールの厳格化に伴う変更点

従業員の氏名、その他の個人データをWebサイトで公開したり、取引先に伝えるときは、個人情報保護委員会への届出をしない限り、本人の同意が必要になります。

① 本人の同意があれば、第三者提供を行うにあたって個人情報保護委員会への届出は不要

② 本人の同意がなく、個人情報保護委員会への届出を行って、第三者提供を行う場合(オプトアウト)

(オプトアウトの手続き)

オプトアウト手続きの内容について、個人情報保護委員会へ届出ることが必要です。

あらかじめ下記の項目を本人が確実に認識できる方法により、本人に通知、又は本人が容易に知り得る状態に置き、本人が提供の停止を求めるために必要な期間をおくこと

ⅰ.第三者への提供を個人データの利用目的とすること

ⅱ.第三者に提供される個人データの項目

ⅲ.第三者への提供の手段又は方法

ⅳ.本人の求めがあったときは、個人データの第三者への提供を停止すること

ⅴ.第三者への提供の停止の求めを受ける方法(新設)

 

2.第三者提供時の記録義務のルール(新設)

上記1を実施した際には、下記4つの記録作成と保存が義務付けられました。

① 提供先の第三者の氏名または名称

② 第三者提供した個人データの本人の氏名

③ 第三者提供した個人データの項目

④ 第三者提供について本人の同意を得ている旨

※また、個人情報保護委員会に届出をしたうえで本人の同意なく第三者提供する場合は、④に代えて「⑤ 個人データを第三者に提供した年月日」を記録する必要があります。

記録の保存期間は、第三者提供の時から「3年間」が原則です。

 

3.要配慮個人情報の取得制限のルール(新設)

病歴に関する情報など要配慮個人情報については、本人の同意がない限り、取得が原則として禁止されました。

<具体的な要配慮個人情報とは>

① 病歴に関する情報

② 心身の機能の障害に関する情報

③ 健康診断の結果に関する情報

④ 健康診断等の結果に基づき、医師により行われた診療、調剤等に関する情報

よって、休職や健康診断の場面で、健康情報を取得する場合には、本人の同意がいることに注意する必要がございます。

 

4.要配慮個人情報の第三者提供の制限のルール(新設)

上記3の要配慮個人情報を第三者に提供する場合は、本人の同意がない限り、原則禁止とされました。

病気による休職や、休職からの復職の場面で、会社が取得した要配慮個人情報を家族に開示するような場面では、本人の同意が必要になります。

 

◆法改正への対応として従業員教育を重視

また、改正個人情報保護法遵守のために何を行ったらよいかとの質問については、従業員教育(従業員の意識向上)(86.4%)、セキュリティ対策構築(情報資産に対するリスク洗出し、リスク対策、サイバー攻撃対応等)(73.5%)、個人情報保護方針や規程類の作成・見直し(71.5%)の順となっています。

同調査では、個人情報保護法の改正について「知っている」との回答は9割以上となりましたが、「改正の内容まで知っている」との回答は4割だったそうです。

内容までは知らない人がまだまだ多い中、まずは従業員教育の徹底は第一課題となりそうです。

◆施行まで1ヵ月を切る

5月30日に迫った改正法の全面施行まであと1ヵ月を切っています。まだ対応が済んでいない事業者も多いかと思いますが、マイナンバー制度の開始から始まり、近時、企業のセキュリティ対策が強く求められているところです。

重大な漏洩事故が起これば企業の経営にも大きく影響しますので、早急な対策が望まれます。