中途採用者の確定拠出年金の取扱いで注意したいこと

◆「iDeCo」の加入者が急増中

確定拠出年金の加入者数は、会社が社員を加入させる「企業型」が500万人超となる一方、自営業者等が加入する「個人型」は平成28年3月末時点で26万人弱(25.7万人)しかいませんでした。

ところが、今年1がつより確定拠出年金法が改正され、20歳から60歳までの人はほぼ全員が「個人型」(以下、「iDeCo」)に加入できるようになって以降、急速に加入者数が増えています。

平成29年3月末時点のiDeCo加入者数は43.0万人ですが、平成26年3月末が18.3万人、平成27年3月末が21.2万人、平成28年末が25.7万人だったことを考えると驚異的な伸びとなっています。

◆会社員等の新規加入も増加

厚生労働省が毎月公表している「確定拠出年金の施行状況」で、厚生年金や共済年金に加入する第2号被保険者のiDeCoの新規加入者数を見ても、1月末時点が22,647人(8,719人)で、2月末時点が43,694人(23,268人)、3月末時点が47,532人(20,372人)、4月末時点が52,487人(16,939人)と、増加傾向にあります(カッコ内は全体のうち共済組合員の数)。

◆確定拠出年金の「ほったらかし」問題も深刻化

確定拠出年金は、加入者が離転職をしても次の勤務先等へ資産を持ち運べる「ポータビリティー」が魅力とされますが、離転職時には資産の保管先を移し換える手続きが必要です。

この手続きを行わない人が55万人超もいて、将来の受取りへの影響が懸念されています。

◆中途採用者には手続きの呼びかけを

企業型の加入者は、退職後6か月以内に移管手続を行わないと手数料だけが引かれ、試算が目減りしていきます。また、「ほったらかし」の期間は加入期間としてカウントされなくなるので、60歳になっても受取りに必要な10年の加入期間を満たせなくなるおそれがあります。

iDeCoの加入者も、転職先が企業型を導入しているか否かにより異なる手続が必要です。今後、中途採用者の中に確定拠出年金の加入者が増えることが予想されます。会社としては、社員の老後資産の確保のためにも、速やかに手続きを行うよう呼びかけることが望ましいでしょう。

 

いわゆる401Kの適用が拡大されたということですが、そもそも、確定拠出年金法は、企業における退職金の受け皿となる制度として平成13年10月から施行されました。

これまでは、退職給付引当金として企業内部で積み立てていたものを、退職時に一時金として支払われていたものが、60歳になるまで引き出せない個人の資産となり、企業の確定拠出年金加入の場合はその掛金は、企業が拠出してくれてその運用は自分で行う。そして、その結果、資産が増えるか減るかは各人の運用次第ということになります。

ただ、定期預金や個人年金の積立よりは、利率がいいので、うまく利用されて老齢年金と合わせてライフプランを考えるということが流行っているようですね。


出来高払制の保障給

労働基準法第27条 出来高払制その他の請負制で使用する労働者については、使用者は、労働時間に応じ一定額の賃金の保障をしなければならない。

よく、外資系企業の日本法人で働く労働者は、「外資系だから・・・」ということで労働法規が適用されないと思われている方がいらっしゃいます。しかし、日本国内における労使関係には、外資系企業であっても、原則として日本の労働法規が適用されます。

たとえば、1件成約につき、〇〇〇〇円を給与として支払うとしているような場合、その月が0件であれば給与はなしというのは認められません。

「労働時間に応じ一定の賃金を保障」という文言には、基準はありませんが、最低賃金法により算出した金額分は、最低限保障されるものと考えられます。

逆に、完全に独立した事業主で、業務委託として仕事を請け負っている場合は、仕事の完了(成果物の引渡し)の対価としての報酬と捉えるので、労働時間に応じ一定の賃金を保障する必要はありません。ただし、たとえば、9時~18時まで〇〇の業務を行うという労務の提供(時間的拘束)がある場合に関しては、その時間については最低保障をしなければなりません。

働き方改革によって、個人で仕事を請け負う、あるいは、テレワーク等により在宅で仕事をすることが、これまで以上に増えてくると予測されますが、知らなかったことにより損をするということがないように心掛けておきましょう。


中小企業における「働き方改革」の導入状況は?

◆中小企業の人手不足は今後も続く?

来年度の新卒求人倍率は、全体で1.78倍、従業員5,000人以上の企業での0.39倍に対して、300人未満企業では6.45倍になると推計されており(リクルートホールディングスの調査)、来年度も売り手市場となり、中小企業での人材確保は厳しい状況が予測されます。

こうした中、商工中金から『中小企業の「働き方改革」に関する調査』の結果が公表されました。この調査は、人手不足への対応にもなると注目され、「働き方改革」で議論されっている各取り組み・制度について、中小企業の導入・実施の状況等を調査したものです(10,022社が対象、有効回答数4,828社)。

調査結果からは、全体的な状況として雇用が不足(「大幅に不足」と「やや不足」の計)しているとする企業が58.7%を占め、「営業」「販売・サービス」「現業・清算」の職種で不足感が強く、特に「正社員」が不足していることがわかります。

◆「働き方改革」について

働き方改革で注目されている12の取組について、「シニア層の活用」「子育て世代の支援」は過半数が既に導入・実施していますが、「在宅勤務」「サテライトオフィス」「副業・兼業の容認」の導入・実施は1割未満でした。

<注目される12の取組み>

①長時間労働の管理・抑制に向けた取組み

②OJT・OFF-JTなど、社員教育の制度

③資格取得・通信教育への補助金など、自己啓発の支援

④在宅勤務制度

⑤勤務先や移動中におけるパソコン等を活用した勤務制度(モバイルワーク)

⑥サテライトオフィス勤務制度

⑦副業・兼業の容認

⑧定年延長など、シニア層活用の制度

⑨育児休業や短時間勤務など、子育て世代支援の制度

⑩妊娠・出産期の女性支援の制度

⑪介護休業など、介護離職防止の制度

⑫外国人労働者活用の制度

 

これからの時代を乗り切るためには、まず、人手不足、「正社員が足りない」のであれば、社内の人材である程度、社内ルールや業務の要領をわかっている非正規労働者を「正社員に登用していく」のが一番の近道であると思います。知識や技術が足りないのであれば、社内あるいは社外での教育訓練を行いキャリアアップを図っていくことが重要です。(キャリアアップ助成金等の活用もできます。)

新卒の正社員でも十分な教育訓練を受けられずに、業務に就かされることが少なくなく、早期の離職につながってしまうこともあります。

ただ、教育訓練は、OJT(職場内教育訓練)だと実務能力は得られますが、人手不足で教え手がいないことが考えられます。また、OFF-JT(職場外で行う教育訓練)だと体系的な学習ができ知識等を業務に役立てることができますが、費用が高いなどの問題があります。(人材開発支援助成金、職場定着支援助成金等の活用)

そういった、教育も含めて、従業員のキャリア形成を通じて、企業の成長戦略を立てていく必要があります。

人材ではなく、人財としての活用の仕方を考えてみてはいかがでしょうか?


「仮眠も労働時間」イオン関連会社に残業支払い命令

イオンの関連会社で警備業の「イオンディライトセキュリティ」(大阪市)の男性社員(52)が宿直の仮眠は労働時間にあたるなどとして、未払い残業代などの支払いを求めた訴訟の判決が17日、千葉地裁であった。

小浜浩庸裁判長は「労働からの解放が保証されているとは言えない」として、原告の請求をほぼ認め、未払い残業代と付加金の計約180万円を支払うよう同社に命じた。

判決によると、男性は2011年に入社し、都内や千葉市のスーパーで警備の仕事をしてきた。千葉市の店で働いていた13年1月~8月には24時間勤務で、30分の休憩時間と4時間半の仮眠時間があった。

原告側は「仮眠時間でも制服を脱がず、異常があった際はすぐ対応できる状態を保ったままの仮眠で、業務から解放されなかった」と主張。小浜裁判長は「仮眠時間や休憩時間も労働から解放されているとは言えない」と指摘した。

男性は残業代支払いを求めた後に出された別の部署への異動命令についても、不当な配置転換だなどとして慰謝料500万円を求めていたが、千葉地裁は「異動は業務上必要があったと認められる」として、請求を棄却した。

閉廷後、会見した男性は「同じような労働環境で働いている同僚がいる。今回の判決が、警備業界の就労環境の向上につながれば」と話した。同社は「判決の内容を精査し、適切な対応をしたい」とコメントした。

出典:朝日新聞デジタル

 

朝のニュースを見て、これはいい資料だと思い、載せさせていただきました。休憩時間や仮眠時間でも、問題があったらすぐに対応しなければならない「待機(手待)時間」であるという考え方が改めて示されたということです。

それよりも、気になるのが「千葉市の店で働いていた13年1月~8月には24時間勤務」という文言で、これについて、残業手当や深夜勤務手当、休日手当等は、適切に支払われているのかという疑問は残ります。具体的な勤務実績等を見ていかないと詳しいことはわかりませんが、もし、警備業界の顧問先ができましたら、そこらへんを注視してみていきたいと思います。


5月30日施行「改正個人情報保護法」への対応状況について

◆3割強の事業者では対応が間に合わない?

これまで5000人以下の個人情報を保有する事業者においては適用除外として扱われておりましたが、5月30日から全面施行される改正個人情報保護法によって、すべての事業者に適用されることになり、企業も対応に追われているところです。

一般財団法人日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)が日本商工会議所との共催で行った「中小企業向け改正個人情報保護法実務対応セミナー」(東京:平成29年1月17日・1月27日の2回開催、大阪:平成28年12月9日の1回開催)において、参加者に対して実施した改正個人情報保護法への対応状況についてのアンケート結果によると(全セミナー参加者642名中、回答者544名)、改正個人情報保護法への対応について、現段階で「対応済みである」との事業者は全体の7.9%と1割に満たず、「平成29年の春頃までには対応する予定である(できると考えている)」と回答した割合は59.6%、「いつまでに対応が完了できるかわからない」との割合は28.7%となったそうです。

昨年末から今年頭にかけての回答状況ですが、対応の進んでない企業が少なくない状況が読み取れます。

◆改正個人情報保護法のポイント

1.個人データの第三提供の制限ルールの厳格化に伴う変更点

従業員の氏名、その他の個人データをWebサイトで公開したり、取引先に伝えるときは、個人情報保護委員会への届出をしない限り、本人の同意が必要になります。

① 本人の同意があれば、第三者提供を行うにあたって個人情報保護委員会への届出は不要

② 本人の同意がなく、個人情報保護委員会への届出を行って、第三者提供を行う場合(オプトアウト)

(オプトアウトの手続き)

オプトアウト手続きの内容について、個人情報保護委員会へ届出ることが必要です。

あらかじめ下記の項目を本人が確実に認識できる方法により、本人に通知、又は本人が容易に知り得る状態に置き、本人が提供の停止を求めるために必要な期間をおくこと

ⅰ.第三者への提供を個人データの利用目的とすること

ⅱ.第三者に提供される個人データの項目

ⅲ.第三者への提供の手段又は方法

ⅳ.本人の求めがあったときは、個人データの第三者への提供を停止すること

ⅴ.第三者への提供の停止の求めを受ける方法(新設)

 

2.第三者提供時の記録義務のルール(新設)

上記1を実施した際には、下記4つの記録作成と保存が義務付けられました。

① 提供先の第三者の氏名または名称

② 第三者提供した個人データの本人の氏名

③ 第三者提供した個人データの項目

④ 第三者提供について本人の同意を得ている旨

※また、個人情報保護委員会に届出をしたうえで本人の同意なく第三者提供する場合は、④に代えて「⑤ 個人データを第三者に提供した年月日」を記録する必要があります。

記録の保存期間は、第三者提供の時から「3年間」が原則です。

 

3.要配慮個人情報の取得制限のルール(新設)

病歴に関する情報など要配慮個人情報については、本人の同意がない限り、取得が原則として禁止されました。

<具体的な要配慮個人情報とは>

① 病歴に関する情報

② 心身の機能の障害に関する情報

③ 健康診断の結果に関する情報

④ 健康診断等の結果に基づき、医師により行われた診療、調剤等に関する情報

よって、休職や健康診断の場面で、健康情報を取得する場合には、本人の同意がいることに注意する必要がございます。

 

4.要配慮個人情報の第三者提供の制限のルール(新設)

上記3の要配慮個人情報を第三者に提供する場合は、本人の同意がない限り、原則禁止とされました。

病気による休職や、休職からの復職の場面で、会社が取得した要配慮個人情報を家族に開示するような場面では、本人の同意が必要になります。

 

◆法改正への対応として従業員教育を重視

また、改正個人情報保護法遵守のために何を行ったらよいかとの質問については、従業員教育(従業員の意識向上)(86.4%)、セキュリティ対策構築(情報資産に対するリスク洗出し、リスク対策、サイバー攻撃対応等)(73.5%)、個人情報保護方針や規程類の作成・見直し(71.5%)の順となっています。

同調査では、個人情報保護法の改正について「知っている」との回答は9割以上となりましたが、「改正の内容まで知っている」との回答は4割だったそうです。

内容までは知らない人がまだまだ多い中、まずは従業員教育の徹底は第一課題となりそうです。

◆施行まで1ヵ月を切る

5月30日に迫った改正法の全面施行まであと1ヵ月を切っています。まだ対応が済んでいない事業者も多いかと思いますが、マイナンバー制度の開始から始まり、近時、企業のセキュリティ対策が強く求められているところです。

重大な漏洩事故が起これば企業の経営にも大きく影響しますので、早急な対策が望まれます。


「副業・兼業」をめぐる企業の実態とこれからの対応

◆「働き方改革実行計画」が公表

3月28日に政府・働き方改革実現会議から「働き方改革実行計画」が示され、主な項目として、(1)同一労働同一賃金など非正規雇用の処遇改善、(2)賃金引上げと労働生産性向上、(3)罰則付き時間外労働の上限規制の導入など長時間労働の是正、(4)柔軟な働き方がしやすい環境整備等が挙げられており、法改正を含めた今後の動向に注目があつまっています。

上記項目のうち、(4)柔軟な働き方がしやすい環境整備の1つとして「副業・兼業推進」がありますが、「副業・兼業」について、現在の企業の対応はどのようになっているのでしょうか。

◆禁止している企業の割合は?

3月14日に経済産業省から「多様で柔軟な働き方に関する3研究会報告書」が公表されましたが、この中の「兼業・副業を通じた創業・新事業創出に関する研究会提言書」によると、兼業・副業を禁止している企業の割合は77.2%でした。

また、「就業規則において禁止している」企業が48.0%、「兼業・副業に関する規定自体ない」39.6%(平成29年2月/リクルートキャリア社調べ)となっています。

◆メリットとリスクの両面から考える

上記の通り、副業・兼業については否定的な企業、または(容認しない前提で)規定自体がない企業が多いのが現状です。

副業・兼業については「社員の能力の成長を促すことができる」「社内では作ることができない人脈を作ることができる」といったメリットが強調されていますが、社内情報流出や個々人の労働時間の増加といったリスクもあります。

今後、厚生労働省のモデル就業規則が兼業・副業について「原則容認」とする方向で改定され、推進に向けたガイドラインが策定される予定となっていますが、企業としてはメリットとリスクの両面を勘案し、社員の副業・兼業に対してどのようなスタンスで臨むのか(認めるのか・認めないのか)、今から十分に検討しておくことが必要です。

 

兼業・副業にはメリット、デメリットあるということに触れておりますが、最も重要なのは兼業・副業をしても健康で働けることです。

なので、例えば、Xさんは、A社に1日7時間(正社員、賃金髙)、A社の勤務後に、B社(パート勤務、賃金低)に1日4時間勤務しておりました。ところが、B社で働いているときに全治3ヵ月ケガをして入院してしまいました。さて、どういうことになるでしょう?

労働時間でいいますと、合わせて1日11時間労働ということになります。1ヵ月22日勤務(暦日数31日)だとすると単純計算で242時間。法定労働時間が177.1時間ですので、64時間54分の時間外労働となります。過労死認定まではいかないまでも、移動等の時間を含めると帰宅して寝る時間がどれくらいあるのか気になるところではあります。

それに、残業代はどっちで負担するのか?という問題がありますが、A社は7時間で法定時間内、一方、B社は4時間だけども、A社での労働時間を通算して8時間を超えた部分に関して支払わなければなりません。つまり1日に関しては3時間分が時間外となり、B社の負担となってしまいます。(そこまで管理しない企業がほとんどだと思われますが)

また、困ったことに、B社で働いているときに労災が起きてしまいました。すると、B社の労災保険が適用となりますので、休業補償給付もB社の賃金で計算された低い金額でしか休業補償されません。

逆に、健康保険は、A社とB社の賃金をトータルして計算されます(短時間労働者の社保適用の場合)ので、健康保険の傷病手当金を受けた方が額としては大きくなりますが、それをやると労災かくしになってしまって、企業としては多大な損失を被ることになり兼ねません。

自分で自分を管理できる人であれば、全然やっても構わないと思いますが、そうでない人達は、思わぬところに落とし穴がありますので、そうなってからでは遅いということも申し上げておきます。


「社会保険未加入事業所」の実態と今年度の加入促進対策

◆未加入の事業所の6割が「保険料の負担が困難」

厚生労働省は、3月末に「社会保険nのかにゅ状況にかかる実態調査」の結果を公表しました。この調査は社会保険の未加入が疑われる約63万事業所を対象に実施し、「未加入」と回答した事業所は13万5490事業所でした。そのうち、加入手続を行っていない事業所は6万4446事業所でした。

未加入の理由として、約6割の事業所が「保険料の負担が困難」であることを挙げています。なお、未加入被保険者が多い業種は「不動産業」11.3%、「建設業」8.5%、「料理・飲食店業」6.9%、「飲食料品小売業」6.5%でした。

◆厚生労働省による加入促進の対策は?

厚生労働省は調査結果を踏まえ、この4月から社会保険の加入促進をより一層強化することを明らかにしています。

具体的な対策として、「飲食業」「理容・美容業」「社会福祉事業」が新規事業所の許可申請を行う際に、社会保険の加入状況を確認することになります。従来から「建設業」や「運送業」が国土交通省に許可申請の際に加入状況の確認を行っていますが、新たに対象業種が追加となります。

加入が確認できなかった場合には、日本年金機構や各都道府県の労働局へ通報し、加入勧奨を行います。

この取り組みは今年7月から実施が予定され、今後は厚生労働省の所管以外の業種にも要請するとしています。

また、既存の事業所への対策として、加入すべき被保険者数が5人以上の事業所から優先的に加入指導を行い、意図的に届出を行わない事業所には立入り検査を実施します。

◆今後はより効率的に

近年の社会保険の加入促進の取組みとして、平成27年度からは、国税庁の情報提供を受けたことにより、従業員の給与を支払っている事業所の把握が可能となりましたが、そのデータを加入指導に活用したことにより、加入につなげることができているようです。今後はより効率的に事業者調査を実施し、加入指導を行うとしています。

 

ということで、今後、社会保険の加入に関しては、業種問わず厳しい動きになってくることが予想されます。確かに、社会保険料は高くて払えないという実情は山々なのですが、年金機構はそこまで融通が利きませんので、放置しておくと過去に遡って請求され、1払えばよかったものを2倍以上払わなければならない可能性もあるため、早めの対応をご検討くださいませ。


最低賃金と業務委託と出来高払制と

最近、採用募集でも、労働条件の変更等に際しても、「完全出来高払」で給与を支払いたいという要望が増えてきているように感じます。

としたときに、「完全出来高払」給与はできるのか?という疑問がございます。

結論としては、最低賃金にひっかかるので、雇用契約では難しいという結論となります。

現在、東京都の地域別最低賃金は932円、千葉県は842円です。特定業種がある場合は、特定最低賃金といずれか高い方の最低賃金になります。

たとえば、千葉県のある企業で「週3日、8時~14時(休憩なし)、出来高払制」で働かせていた場合、最低でも月60,624円(4週×3日×6時間×842円)は支払わないと最低賃金に引っかかるということになります。

売上が0なのに、なんで給料を支払わなければならないのか、だったら雇用契約以外でやればいいじゃないか!という動きが、業務委託ということになってきているのだと思われます。

しかし、業務委託は、仕事に対して具体的な指示や命令をすることができません。「この日、この時間に、この作業をしてほしい」ということを言ってしまうと、実態として雇用契約であるという判断をされますので、そういった働き方をさせたいというのであれば、最初から雇用契約という話になります。

また、労働条件の変更に際して、たとえば、基本給の一部を出来高払制にしたいという場合も、今まで基本給が20万円だったのが、15万円に減らされて、5万円部分は出来高払になるというような話だと、労働条件の不利益変更になるので、代償措置や個別同意あるいは労働組合との協議が必要になってくるなどの話になります。完全出来高払制への変更だとしても、上記措置を実施した上で、最低賃金は下回れませんので、実労働時間168時間とすると141,456円は最低保障する必要があります。

※ただし、基本給部分を最低賃金に設定すると、毎年毎年、最低賃金の改定に合わせて基本給を変更しなければならないことになり、業務が煩雑になります。

諸々、考えていくと非常に難しい問題です。もし、完全出来高制、業務委託をやられるのであれば、メリットよりもリスクの精査をして、実態もそういった働き方にしていかなければならないということを考える必要があります。

 


改正労働契約法の無期転換ルール【2018年問題】

2018年(平成30年)は、診療(調剤)報酬・介護報酬の同時改定時期でもありますが、実は、有期契約労働者等(フルタイム、パート等)でも、2013年4月1日から通算して5年働いている場合、無期雇用の正規社員として転換請求ができるという通称「2018年問題」があり、企業の対応が急がれております。

前の雇用契約と後の雇用契約の間に6ヵ月以上のクーリング期間を設けると0カウントになるので、勤続5年到達前に雇止めを行ったり、派遣契約や業務委託契約にしたり等(これは認められません)、色々あの手この手で考えることが出てきております。

しかしながら、今現在、労働市場は慢性的な人手不足であるということを鑑みると、積極的に有期契約労働者等を無期雇用とする動きもあっていいのではないか?という考え方もあります。

無期契約の正規社員ではなく、無期契約のフルタイム、パートとして契約するという考え方です。ただし、これをするには、就業規則等で明確に区分して規定し、周知しておくことが必要です。

例えば、5年間パートで働いていた方が、2018年4月1日以降も同じ条件で、続けて働きたいと申し出た(更新の)場合には問題にはなりませんが、期間の定めのない労働契約の締結の申し込みをしてきた場合で、会社に「正規社員」と「有期契約のパート」の就業規則しかない場合は、たとえ正規社員としての能力・知識等を備えていない労働者であっても、「正規社員」の労働条件で働かせなければなりません。

本来であれば、5年間の間に必要な能力・知識等を高め、社内試験を受ける等をして正規社員になることが望ましいのですが、多くの場合は必ずしも思ったようにはいきませんし、会社にも生産性の低い正規社員を雇う余裕の有無の問題もあります。

であるのならば、就業規則で「無期契約のパート」という区分を作って、今後のキャリアアップも考慮した制度を導入する等をして、戦力となる正規社員を育てるという視点でやってみるというのも一つの策ではあると考えます。


雇用保険法等の一部を改正する法律案

この法律案は、3月31日、参議院本会議で可決、成立しました。

概要は以下のとおり

1.失業等給付の拡充(雇用保険法)

2.失業等給付に係る保険料率及び国庫負担の時限的引き下げ(雇用保険法、労働保険徴収法)

3.育児休業に係る制度の見直し(育児・介護休業法、雇用保険法)

4.雇用保険二事業(雇用安定事業・能力開発事業)に係る生産性向上についての法制的対応(雇用保険法)

5.職業紹介の機能強化及び求人情報等の適正化(職業安定法)

【雇用保険法等の一部を改正する法律案(平成29年1月31日提出)】

(参考)http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/soumu/houritu/193.html

 

上記、改正の中で、ニュース等でも話題になったのが、「5.職業紹介の機能強化及び求人情報等の適正化(職業安定法)」です。

労働条件の明示が、求人募集の段階か、労働契約の段階か、その内容には固定残業代、試用期間、裁量労働制、派遣労働の明示が含まれるのかなど。

私的には、固定残業代に関しては、労働者の不利益にならないよう、たとえば、「20時間分の残業代を業務手当として基本給に上乗せして支払い、20時間を上回る残業をしている月は別途残業代を計算し支給する」としている場合であれば問題ないと思うわけです。

固定残業や裁量労働制が悪いというわけではなく、労働者に正しい情報を伝えて、正しく運用できていれば良いわけですが、実際は、制度が濫用されて、事業主のいいように解釈されて運用されているということに問題があるような気がいたします。