[ 特集 ]

「副業・兼業」をめぐる企業の実態とこれからの対応

◆「働き方改革実行計画」が公表

3月28日に政府・働き方改革実現会議から「働き方改革実行計画」が示され、主な項目として、(1)同一労働同一賃金など非正規雇用の処遇改善、(2)賃金引上げと労働生産性向上、(3)罰則付き時間外労働の上限規制の導入など長時間労働の是正、(4)柔軟な働き方がしやすい環境整備等が挙げられており、法改正を含めた今後の動向に注目があつまっています。

上記項目のうち、(4)柔軟な働き方がしやすい環境整備の1つとして「副業・兼業推進」がありますが、「副業・兼業」について、現在の企業の対応はどのようになっているのでしょうか。

◆禁止している企業の割合は?

3月14日に経済産業省から「多様で柔軟な働き方に関する3研究会報告書」が公表されましたが、この中の「兼業・副業を通じた創業・新事業創出に関する研究会提言書」によると、兼業・副業を禁止している企業の割合は77.2%でした。

また、「就業規則において禁止している」企業が48.0%、「兼業・副業に関する規定自体ない」39.6%(平成29年2月/リクルートキャリア社調べ)となっています。

◆メリットとリスクの両面から考える

上記の通り、副業・兼業については否定的な企業、または(容認しない前提で)規定自体がない企業が多いのが現状です。

副業・兼業については「社員の能力の成長を促すことができる」「社内では作ることができない人脈を作ることができる」といったメリットが強調されていますが、社内情報流出や個々人の労働時間の増加といったリスクもあります。

今後、厚生労働省のモデル就業規則が兼業・副業について「原則容認」とする方向で改定され、推進に向けたガイドラインが策定される予定となっていますが、企業としてはメリットとリスクの両面を勘案し、社員の副業・兼業に対してどのようなスタンスで臨むのか(認めるのか・認めないのか)、今から十分に検討しておくことが必要です。

 

兼業・副業にはメリット、デメリットあるということに触れておりますが、最も重要なのは兼業・副業をしても健康で働けることです。

なので、例えば、Xさんは、A社に1日7時間(正社員、賃金髙)、A社の勤務後に、B社(パート勤務、賃金低)に1日4時間勤務しておりました。ところが、B社で働いているときに全治3ヵ月ケガをして入院してしまいました。さて、どういうことになるでしょう?

労働時間でいいますと、合わせて1日11時間労働ということになります。1ヵ月22日勤務(暦日数31日)だとすると単純計算で242時間。法定労働時間が177.1時間ですので、64時間54分の時間外労働となります。過労死認定まではいかないまでも、移動等の時間を含めると帰宅して寝る時間がどれくらいあるのか気になるところではあります。

それに、残業代はどっちで負担するのか?という問題がありますが、A社は7時間で法定時間内、一方、B社は4時間だけども、A社での労働時間を通算して8時間を超えた部分に関して支払わなければなりません。つまり1日に関しては3時間分が時間外となり、B社の負担となってしまいます。(そこまで管理しない企業がほとんどだと思われますが)

また、困ったことに、B社で働いているときに労災が起きてしまいました。すると、B社の労災保険が適用となりますので、休業補償給付もB社の賃金で計算された低い金額でしか休業補償されません。

逆に、健康保険は、A社とB社の賃金をトータルして計算されます(短時間労働者の社保適用の場合)ので、健康保険の傷病手当金を受けた方が額としては大きくなりますが、それをやると労災かくしになってしまって、企業としては多大な損失を被ることになり兼ねません。

自分で自分を管理できる人であれば、全然やっても構わないと思いますが、そうでない人達は、思わぬところに落とし穴がありますので、そうなってからでは遅いということも申し上げておきます。


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「社会保険未加入事業所」の実態と今年度の加入促進対策

◆未加入の事業所の6割が「保険料の負担が困難」

厚生労働省は、3月末に「社会保険nのかにゅ状況にかかる実態調査」の結果を公表しました。この調査は社会保険の未加入が疑われる約63万事業所を対象に実施し、「未加入」と回答した事業所は13万5490事業所でした。そのうち、加入手続を行っていない事業所は6万4446事業所でした。

未加入の理由として、約6割の事業所が「保険料の負担が困難」であることを挙げています。なお、未加入被保険者が多い業種は「不動産業」11.3%、「建設業」8.5%、「料理・飲食店業」6.9%、「飲食料品小売業」6.5%でした。

◆厚生労働省による加入促進の対策は?

厚生労働省は調査結果を踏まえ、この4月から社会保険の加入促進をより一層強化することを明らかにしています。

具体的な対策として、「飲食業」「理容・美容業」「社会福祉事業」が新規事業所の許可申請を行う際に、社会保険の加入状況を確認することになります。従来から「建設業」や「運送業」が国土交通省に許可申請の際に加入状況の確認を行っていますが、新たに対象業種が追加となります。

加入が確認できなかった場合には、日本年金機構や各都道府県の労働局へ通報し、加入勧奨を行います。

この取り組みは今年7月から実施が予定され、今後は厚生労働省の所管以外の業種にも要請するとしています。

また、既存の事業所への対策として、加入すべき被保険者数が5人以上の事業所から優先的に加入指導を行い、意図的に届出を行わない事業所には立入り検査を実施します。

◆今後はより効率的に

近年の社会保険の加入促進の取組みとして、平成27年度からは、国税庁の情報提供を受けたことにより、従業員の給与を支払っている事業所の把握が可能となりましたが、そのデータを加入指導に活用したことにより、加入につなげることができているようです。今後はより効率的に事業者調査を実施し、加入指導を行うとしています。

 

ということで、今後、社会保険の加入に関しては、業種問わず厳しい動きになってくることが予想されます。確かに、社会保険料は高くて払えないという実情は山々なのですが、年金機構はそこまで融通が利きませんので、放置しておくと過去に遡って請求され、1払えばよかったものを2倍以上払わなければならない可能性もあるため、早めの対応をご検討くださいませ。


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最低賃金と業務委託と出来高払制と

最近、採用募集でも、労働条件の変更等に際しても、「完全出来高払」で給与を支払いたいという要望が増えてきているように感じます。

としたときに、「完全出来高払」給与はできるのか?という疑問がございます。

結論としては、最低賃金にひっかかるので、雇用契約では難しいという結論となります。

現在、東京都の地域別最低賃金は932円、千葉県は842円です。特定業種がある場合は、特定最低賃金といずれか高い方の最低賃金になります。

たとえば、千葉県のある企業で「週3日、8時~14時(休憩なし)、出来高払制」で働かせていた場合、最低でも月60,624円(4週×3日×6時間×842円)は支払わないと最低賃金に引っかかるということになります。

売上が0なのに、なんで給料を支払わなければならないのか、だったら雇用契約以外でやればいいじゃないか!という動きが、業務委託ということになってきているのだと思われます。

しかし、業務委託は、仕事に対して具体的な指示や命令をすることができません。「この日、この時間に、この作業をしてほしい」ということを言ってしまうと、実態として雇用契約であるという判断をされますので、そういった働き方をさせたいというのであれば、最初から雇用契約という話になります。

また、労働条件の変更に際して、たとえば、基本給の一部を出来高払制にしたいという場合も、今まで基本給が20万円だったのが、15万円に減らされて、5万円部分は出来高払になるというような話だと、労働条件の不利益変更になるので、代償措置や個別同意あるいは労働組合との協議が必要になってくるなどの話になります。完全出来高払制への変更だとしても、上記措置を実施した上で、最低賃金は下回れませんので、実労働時間168時間とすると141,456円は最低保障する必要があります。

※ただし、基本給部分を最低賃金に設定すると、毎年毎年、最低賃金の改定に合わせて基本給を変更しなければならないことになり、業務が煩雑になります。

諸々、考えていくと非常に難しい問題です。もし、完全出来高制、業務委託をやられるのであれば、メリットよりもリスクの精査をして、実態もそういった働き方にしていかなければならないということを考える必要があります。

 


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改正労働契約法の無期転換ルール【2018年問題】

2018年(平成30年)は、診療(調剤)報酬・介護報酬の同時改定時期でもありますが、実は、有期契約労働者等(フルタイム、パート等)でも、2013年4月1日から通算して5年働いている場合、無期雇用の正規社員として転換請求ができるという通称「2018年問題」があり、企業の対応が急がれております。

前の雇用契約と後の雇用契約の間に6ヵ月以上のクーリング期間を設けると0カウントになるので、勤続5年到達前に雇止めを行ったり、派遣契約や業務委託契約にしたり等(これは認められません)、色々あの手この手で考えることが出てきております。

しかしながら、今現在、労働市場は慢性的な人手不足であるということを鑑みると、積極的に有期契約労働者等を無期雇用とする動きもあっていいのではないか?という考え方もあります。

無期契約の正規社員ではなく、無期契約のフルタイム、パートとして契約するという考え方です。ただし、これをするには、就業規則等で明確に区分して規定し、周知しておくことが必要です。

例えば、5年間パートで働いていた方が、2018年4月1日以降も同じ条件で、続けて働きたいと申し出た(更新の)場合には問題にはなりませんが、期間の定めのない労働契約の締結の申し込みをしてきた場合で、会社に「正規社員」と「有期契約のパート」の就業規則しかない場合は、たとえ正規社員としての能力・知識等を備えていない労働者であっても、「正規社員」の労働条件で働かせなければなりません。

本来であれば、5年間の間に必要な能力・知識等を高め、社内試験を受ける等をして正規社員になることが望ましいのですが、多くの場合は必ずしも思ったようにはいきませんし、会社にも生産性の低い正規社員を雇う余裕の有無の問題もあります。

であるのならば、就業規則で「無期契約のパート」という区分を作って、今後のキャリアアップも考慮した制度を導入する等をして、戦力となる正規社員を育てるという視点でやってみるというのも一つの策ではあると考えます。


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退職金制度の実情

◆退職給付制度がある企業の割合は減り続けている

厚生労働省の「就労条件総合調査結果の概況」によると、退職給付制度がある企業の割合は、平成5年をピークに低下し続けています。

平成元年  88.9%

平成5年  92.0%

平成9年  88.9%

平成15年 86.7%

平成20年 85.3%

平成25年 75.5%

◆退職給付制度は2種類ある

①退職一時金制度・・・「退職給付手当」「退職慰労金」「退職功労報奨金」等として退職時に一括して支給する制度

②退職年金制度・・・「確定拠出年金(企業型・規約型・基金型)」「厚生年金基金」「中小企業退職金共済」「自社年金」等、退職後、一定期間又は生涯(※厚生年金基金の代行部分のみ)にわたって一定の金額を年金として支給する制度

◆そもそも、退職給付は法律で義務付けられていない

退職給付は、就業規則の相対的記載事項として、「定める場合には必ず記載しなければならない」ですが、定めない場合であれば記載しないでもいいことになっております。つまり、企業の経営方針によって決まる部分であるといえます。

4月から新生活を始めるにあたって、ご自分の会社が退職給付のある会社なのか、そうでないかということは早い段階で知っておくべきことです。

後で、退職給付が出るものだと思って、ローンを組んで、家を買って、退職給付をあてにしていたりすると大変なことになります。

◆退職給付の計算方法

退職給付の計算方法は、企業によってまちまちですが、大きく分けて3つです。

①基本給と勤続年数から算出する方法

②勤続年数により一定の金額が支給される方法(別テーブル方式)

③それらを組み合わせて退職給付額を計算するという方法

多くの企業では、この3つの内①が多く使われている傾向にあります。

退職給付=1ヵ月分の基本給 × 勤続年数 × 給付率

※給付率は、会社ごとに設定します。例えば、退職事由が「自己都合」であれば58%、「会社都合」であれば67%といった感じです。

たとえば、基本給30万円で、勤続35年の方が、定年退職した場合は、30万円×35年×100%=1,050万円、自己都合の場合は、30万円×35年×58%=609万円、会社都合の場合は、30万円×35年×67%=703万5千円となります。

ただし、現在の退職金制度は、先述のように退職一時金の制度と年金の制度があり、この計算方法は退職一時金の制度の計算式であるとご認識ください。企業によっては、この二つの制度を併用していることもありますので、それも考慮に入れる必要があります。

◆退職給付の相場は

「平成25年就労条件総合調査結果の概況:結果の概要(5退職給付(一時金・年金)の支給実態」(厚生労働省)

退職給付(一時金・年金)制度がある企業について、平成24年1年間における勤続年数20年以上かつ45歳以上の定年退職者の制度形態別の給付額は以下の通り(平均値)

一時金制度のみ 年金制度のみ 両制度併用
大学卒(管理・事務・技術職)  1,369万円 1,923万円 2,367万円
高校卒(管理・事務・技術職) 1,091万円 1,611万円 2,158万円
高校卒(現業職) 870万円 1,131万円 1,600万円

定年退職までに35年以上働けば、これくらいの金額にはなるだろうと考えるのが一般的ではないでしょうか。

しかしながら、今後は、自分で運用してその運用益を将来の年金原資にあてるという「確定拠出年金」が、企業の退職給付の受け皿として拡大していく傾向にあります。掛金も低いままだと将来もらえる額も少なくなりますし、運用も自分で行わなければならないため、その結果、将来もらえる年金額が変わります。

中小企業退職金共済の場合は、掛金と運用利回りの積み重ねなので、金利が上がらないと厳しい現状があります。(予定運用利回り1%)

ですので、今、ご自分の会社の退職給付制度は、どの制度に入っていて自分はいくらどの制度に掛けているのかを把握しておかないと、将来設計が成り立たないということにご注意ください。

◆同一労働同一賃金との兼ね合いは?

同一労働同一賃金のガイドラインでは、「基本給」「賞与」「福利厚生」については取り上げられていますが、「退職給付」への言及はありません。ただし、今後の議論としてあがってくる可能性はゼロではないため、対策を講じておく必要はあると思われます。

たとえば、退職給付金額が高すぎるので、退職給付制度を変えたいというような場合。既存の従業員は、既得権を確保するために、これまで通りの退職給付制度、新規従業員は新制度の退職給付制度で支給するということが可能であるかどうか。(同じ正規社員で、同じ働き方なのに退職給付金額が低くなる問題)

ガイドラインでは、正規―非正規間のことのみに終始しておりますが、正規―正規間、非正規―非正規間ということも想定に入れるべきなのか、そうでないのか。そもそも、退職給付は、対象ではないので考慮しなくていいのか、そうではないのか。退職給付の性格を「功労報償」と見るべきか、「賃金の後払い」と見るべきかによっても対応が変わってきます。

悩みの種は尽きないところではありますが、今後の法令改正の動向、裁判例や行政通達等で確認しながら、探っていくしかないというのが現状で、その都度、対応していかざるを得ない状況になることは間違いないと考えられます。