◆退職給付制度がある企業の割合は減り続けている

厚生労働省の「就労条件総合調査結果の概況」によると、退職給付制度がある企業の割合は、平成5年をピークに低下し続けています。

平成元年  88.9%

平成5年  92.0%

平成9年  88.9%

平成15年 86.7%

平成20年 85.3%

平成25年 75.5%

◆退職給付制度は2種類ある

①退職一時金制度・・・「退職給付手当」「退職慰労金」「退職功労報奨金」等として退職時に一括して支給する制度

②退職年金制度・・・「確定拠出年金(企業型・規約型・基金型)」「厚生年金基金」「中小企業退職金共済」「自社年金」等、退職後、一定期間又は生涯(※厚生年金基金の代行部分のみ)にわたって一定の金額を年金として支給する制度

◆そもそも、退職給付は法律で義務付けられていない

退職給付は、就業規則の相対的記載事項として、「定める場合には必ず記載しなければならない」ですが、定めない場合であれば記載しないでもいいことになっております。つまり、企業の経営方針によって決まる部分であるといえます。

4月から新生活を始めるにあたって、ご自分の会社が退職給付のある会社なのか、そうでないかということは早い段階で知っておくべきことです。

後で、退職給付が出るものだと思って、ローンを組んで、家を買って、退職給付をあてにしていたりすると大変なことになります。

◆退職給付の計算方法

退職給付の計算方法は、企業によってまちまちですが、大きく分けて3つです。

①基本給と勤続年数から算出する方法

②勤続年数により一定の金額が支給される方法(別テーブル方式)

③それらを組み合わせて退職給付額を計算するという方法

多くの企業では、この3つの内①が多く使われている傾向にあります。

退職給付=1ヵ月分の基本給 × 勤続年数 × 給付率

※給付率は、会社ごとに設定します。例えば、退職事由が「自己都合」であれば58%、「会社都合」であれば67%といった感じです。

たとえば、基本給30万円で、勤続35年の方が、定年退職した場合は、30万円×35年×100%=1,050万円、自己都合の場合は、30万円×35年×58%=609万円、会社都合の場合は、30万円×35年×67%=703万5千円となります。

ただし、現在の退職金制度は、先述のように退職一時金の制度と年金の制度があり、この計算方法は退職一時金の制度の計算式であるとご認識ください。企業によっては、この二つの制度を併用していることもありますので、それも考慮に入れる必要があります。

◆退職給付の相場は

「平成25年就労条件総合調査結果の概況:結果の概要(5退職給付(一時金・年金)の支給実態」(厚生労働省)

退職給付(一時金・年金)制度がある企業について、平成24年1年間における勤続年数20年以上かつ45歳以上の定年退職者の制度形態別の給付額は以下の通り(平均値)

一時金制度のみ 年金制度のみ 両制度併用
大学卒(管理・事務・技術職)  1,369万円 1,923万円 2,367万円
高校卒(管理・事務・技術職) 1,091万円 1,611万円 2,158万円
高校卒(現業職) 870万円 1,131万円 1,600万円

定年退職までに35年以上働けば、これくらいの金額にはなるだろうと考えるのが一般的ではないでしょうか。

しかしながら、今後は、自分で運用してその運用益を将来の年金原資にあてるという「確定拠出年金」が、企業の退職給付の受け皿として拡大していく傾向にあります。掛金も低いままだと将来もらえる額も少なくなりますし、運用も自分で行わなければならないため、その結果、将来もらえる年金額が変わります。

中小企業退職金共済の場合は、掛金と運用利回りの積み重ねなので、金利が上がらないと厳しい現状があります。(予定運用利回り1%)

ですので、今、ご自分の会社の退職給付制度は、どの制度に入っていて自分はいくらどの制度に掛けているのかを把握しておかないと、将来設計が成り立たないということにご注意ください。

◆同一労働同一賃金との兼ね合いは?

同一労働同一賃金のガイドラインでは、「基本給」「賞与」「福利厚生」については取り上げられていますが、「退職給付」への言及はありません。ただし、今後の議論としてあがってくる可能性はゼロではないため、対策を講じておく必要はあると思われます。

たとえば、退職給付金額が高すぎるので、退職給付制度を変えたいというような場合。既存の従業員は、既得権を確保するために、これまで通りの退職給付制度、新規従業員は新制度の退職給付制度で支給するということが可能であるかどうか。(同じ正規社員で、同じ働き方なのに退職給付金額が低くなる問題)

ガイドラインでは、正規―非正規間のことのみに終始しておりますが、正規―正規間、非正規―非正規間ということも想定に入れるべきなのか、そうでないのか。そもそも、退職給付は、対象ではないので考慮しなくていいのか、そうではないのか。退職給付の性格を「功労報償」と見るべきか、「賃金の後払い」と見るべきかによっても対応が変わってきます。

悩みの種は尽きないところではありますが、今後の法令改正の動向、裁判例や行政通達等で確認しながら、探っていくしかないというのが現状で、その都度、対応していかざるを得ない状況になることは間違いないと考えられます。

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